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「深夜のホテル」「共有する」「マヨネーズ」

20111013


「……何これ」
 サークルの合宿先、じゃ●んで安かったからと予約し、無事に参加者全員でたどり着いたホテルのロビーで、ネコは途方に暮れた。
 「シーチキンマヨネーズ」、つまり所謂ツナマヨとかかれたコンビニおにぎりのパッケージをずいと差し出されたのである。ちなみに現在時刻は午前0時を少しばかりまわったところ。今日の行程はほぼすべて終了し、あとは部屋に帰って寝るのみ、とネコは思っていた。
「いや、夜食」
「なんで」
「俺が腹減ったから」
「はぁ……」
 だったらどうして私に差し出すんだろう、この人は。
 見るからに疑問符を浮かべるばかりのネコを見て、クマは、あぁ、と声を漏らす。
「一緒に食べないか、と思ったんだが」
 お前、一応女の子だし、夜中は食わないよな。
 そういえば、と付け足された言葉はすんなりと諦めの言葉なのに、クマの頭は下を向き、心なしか肩も背中も丸まっている。
 ずるいなぁ。
 1時に近付くばかりの時計から目を背けて、ネコはクマの隣に腰かけた。
「もったいないから私も食べる」
 クマの顔は見ないまま、おにぎりのパッケージを開けて、一口。
 やっぱりこれ、夜中に食べるものじゃない。


(ハートブレイク・ブレイカー)




「朝のベッド」「ケンカをする」「噂」

20101208


 ケータイのアラームをとめて、そのままインターネットに繋ぐ。タイマー設定でヒーターはついているから、部屋が温まるまで。そう言い聞かせて、ベッドの中で丸くなった。
 サークルの同期や先輩ばかりをフォローした twitter のタイムラインでは、今日もあの娘の噂。彼女が mixi も twitter もやってないからってみんな言いたい放題だなぁ。
twitter なんてユーザー登録してなくたってタイムラインを見ることはできるのに。そう思いながらも、目は彼女の噂ばかりを追ってしまう。
 『ケンカしたんだってさ。』
 『あれは今回もヤツが悪いよ。』
 名前を出さないように、けれどぽつぽつと呟かれる内容を追うのは、最近の朝の日課だ。我ながらなんて趣味の悪い、と思うものの、どうしようもない。あわよくば彼女を掻っ攫いたいと思っているのは、今に始まったことではないのだから。
 ケータイを折り畳んで、ベッドから抜け出す。また今日も、退屈な一日が始まる。




「朝の駅」「裏切る」「本」

20101026


「おはよう」
「おはよ」
 朝の駅は、騒がしい。皆同じ方へ歩いているようで、それぞれ違うところを目指している。時折知り合いに出会ったらしい挨拶の声も聞こえるが、それよりも、アナウンスや、足音や、なんだかよくわからないざわざわした音ばかりが聞こえて、本当は、混み合う朝の時間帯の駅は好きになれない。
 それでも授業の時間帯に合わせたのでもないのにこの時間帯の駅にばかり来てしまうのは、きっと——
「おう、おはよう、ネコ」
「……おはよ、クマ」
 この小柄な同期に会うためというより他にない。
 寒くなってきたからか、今日の服装は暖かそうな布地——残念ながらその布地のことをなんと言うのかクマは知らない——のスカートに、黒のジャケットとストール。タイツだか何かで足はびっちりと覆われていて、世に言う絶対領域は全くない。しかし正直なところ、クマは絶対領域がない方が好みなので、にやついてしまわないかと口元を引き締めるのに必死だった。
 そんなクマの右手を見て、ネコは元から細い目をさらに細める。
「何読んでたの?」
「読むか?」
 ほれ、と右手の本を手渡すと、受け取ったネコがぱらぱらとページをめくる。
 先に進むにつれ、ネコの眉間に皺が寄っていくのを見て、クマは苦笑した。
「クマって……クマってこういう小説読むんだ……」
「まぁ、そりゃぁ、な」
「……裏切られた……」
 がっくし、という効果音がしっくりきそうなほどに肩を落としたネコの頭をぐしゃりと撫でて、クマはネコの手から本をとった。


(ハートブレイク・ブレイカー)




「早朝の床の上」「落ちる」「雷」

20101021


 ぺたりぺたりと音を立てて廊下を歩く。早朝の床の上、裸足で音を立てて歩くのは、ちょっとした抵抗だ。昌男は何も言わないが、野沢は嫌がるのだ。
 昌男の部屋の前を通ると、微かなギターの音がする。朝の5時。早起きでも徹夜でも、昌男ならばどちらでも有り得る。さて、どちらだろう。ふと独りごちて、頭を振る。気にしても仕方がない。それに、今気にすべきは他のことだ。
 2回、ドアをノックしてノブを回す。きょとんとした表情の昌男と目が合った。徹夜だな。見当をつけて、西鶴はぺたぺたと歩み寄る。
「知ってたんですか」
「何を? え、あ、もしかして、今の時間?」
「違う! で、ちなみに今何時だと思いますか」
 問いかけて、はたと気づく。これではいつも通りだ。訊きたいことを訊く前に、野沢が起き出してきてしまう。
 えー、と言いながら時計を見る昌男の額にデコピンをして、西鶴は言った。
「野沢さん、ここ、出てくって」
「……あぁ」
 そうらしいね。
 他人事のように言いながら、濁る瞳が、力を失った手が、落ちていく。雷に打たれたとはよく言うが、雷が真横に落ちたとしても、この男はこんな風にはならない。
 色を失った部屋に、ひとつ空いた隣のドアが開く音が響いた。


(さんにんぐらし)




「夕方のグラウンド」「決める」「指輪」

20101018


 影が長い。
 ひとりごちて、野沢は足をぶらりと上げた。夕方のグラウンドには誰もいなくて、それもそのはず、今日は休日だ。その誰もいないグラウンドを、ひとり、歩いていた。
 母校でもなんでもない、ただ、近所にあるだけの学校のグラウンドは、懐かしさを呼び覚まして、けれども他人行儀だ。
「何ひとりでたそがれてるんですか」
 後ろから西鶴に声をかけられ、野沢は振り向いて口角を上げる。この頃野沢はよくこんな風に笑う。西鶴はあまり、その笑い方が好きではなかった。もっとまっすぐな笑い方をすればいいのに。その方が似合うのに。
 不満そうな表情を察してか、野沢が口を開いた。
「決めたの」
 私、結婚するわ。だから、出て行くね。三人暮らしのあの部屋を。
 いつからか野沢が嵌めていた、左手の指輪。その意味を知って、西鶴はただ、立ち尽くした。


(さんにんぐらし)




「夕方の路地裏」「抱き合う」「飴」

20101006


 夕方の路地裏は、そこだけぽっかりと暗くて、夜のよう。
 繋いだ手がただあたたかくて、この手があれば何も要らないとすら、思う。
「ちょっと、福島、どこまで行くの」
「あぁ、ごめん」
 足を止めれば、少し後ろで同じように立ち止まる音。考えてみれば、こんな風に外で手を繋ぐことなど、なかった。
 もう少し、もう少しだけ、繋いでいたい。
 指を絡めて強く握れば、後ろで小さく笑う気配。振り向くよりも先に、引き寄せられる。口を開こうとすると、宮城の指が、口を塞いだ。
「これでも舐めて静かにしてなよ」
 ほんとうに、世話が焼ける。
 言葉に反して楽しそうにそう言いながら、宮城は福島の舌に飴玉をのせた。


(夜伽に代えまして)




「早朝の畳の上」「見上げる」「猫」

20101006


 すやすやと眠る横顔を眺めて、福島はふっと唇をゆるめる。いつまで経っても宮城の寝顔は幼いままだ。診療所での彼からは、あまり想像のできない寝顔だ。いつもは皮肉っぽく歪められている唇は、半開きになっている。試しに指を近づけてみたら、ちろりと指先を舐められた。
 寝惚けている振りなのか、本当に未だ寝ているのか。
 どちらなのだろう、と思いながら、指先を滑らせる。鎖骨をなぞって、肩口から、指先まで。それからまた、反対側も。肋骨の一本一本もなぞっていくと、手を掴まれた。
「いつから起きてたんだ?」
「あばらはくすぐったいんだよ」
 手を掴んだそのまま、宮城は福島の上に圧し掛かる。
 まるで猫みたいだ。
 身体の上の宮城を見上げて、福島は小さく笑う。
「……何」
「なんでもないよ」
 まだ夜は明けたばかり。早朝の畳の上、猫のように戯れた。


(夜伽に代えまして)




「夕方の橋」「探す」「指輪」

20101004


 音はしなかった。
 ただ静かに首にかかっていた鎖は切れて、指輪は落ちた。音も立てずに転がっていく。
 誰もいない夕方の橋の上、呆然とする頭の片隅で、これでいいの、と声がする。思い出など捨ててしまえ。あの人はもう、戻ってこないから。
 がくりと膝をついて、それでも私の手は指輪を探す。
 あの人は、もう、戻ってきやしない。知っている。あの人はもう、戻ってこない。一度だけ見かけたあのとき、とても幸せそうに笑っていて、それがすべてだった。あの人の中に、もう私はいないでしょう。
 いつの間に泣き始めていたのだろう。
 ぱたり、ぱたりとアスファルトに小さく滲む涙を拭うこともせず、私は泣いた。




「夕方のプラネタリウム」「嘘をつく」「飴」

20101004


 飴玉が歯にあたってからころと小さくぶつかる音がする。プラネタリウムは飲食禁止だ。聞き咎められやしないだろうかと首をすくめて隣を見れば、何も気にしていない風で椅子にごろりと体重を預けて頭上を見上げる男が一人。自分が気にしすぎだと思う反面、この男は気にしなさすぎでなかろうか。
 眉を顰めて見つめていれば、男がこちらを振り向いた。
「そんなに眉間に皺寄せてるとババァになるぞ」
 暗くて表情などそんなにわかるかとは思うものの、失礼である。
「どうせいつかはなるもの」
「わかった。ハゲるぞ」
「残念ながらうちの家系にハゲはいませんっ」
 小声でのやり取りをしようとすれば、顔が近づくのは当たり前のこと。気づいた途端に勢いよく離れようとした私は、離れるのではなく、より近づく羽目になっていた。
 どういうことなの!
 こちらの心中を察する気などさらさらないのだろう。男はひそりと言う。
「いいじゃねぇか。どうせみんなこれくらいしてるだろ
「そう……なの……?」
「さぁ」
 どうだろうな。知らねぇよ。
 嘯く男がちらりと周りに目を走らせれば、興味津々とばかりにこちらをちらちら見ている中学生たちのほかには、カップルどころかそもそも客がほとんどいない。「みんな」というのは完全に嘘だったらしい。
 そんなことに気づく余裕もなく、私はただ、ときどき見える頭上の星を、そっと心にしまった。




欲張り

20070629


私が見ているこの景色を、あなたと共有したいのです。
空が繋がっていようとも、景色は同じにはなり得ません。
あなたの見ているその景色を、私は共有したいのです。
あなたのすべてを欲しいのではありません。
ほんの少し、繋がっていられればそれだけで良いのです。
傲慢ですか。
そう言われても仕方ないでしょう。
欲はいくら満たしても満たされません。
何かを一つ手に入れたら、また別の何かが欲しくなるのです。
あなたは違うのですか。
どうしようもなく、誰かを、何かを求めてしまうことはないのですか。


ほし

20070618


見えない星を掴むことは容易くないね
あなたが寂しそうに笑うたび僕まで寂しくなる

伸ばした腕が空っぽのままでも
それでもずっとその腕を伸ばし続けるあなたが
僕にはとても眩く見えて
すぐにも壊れそうなガラス細工じゃなくあなたが血の通った人間でよかったと思ったんだ

見えない星を掴むことはたしかに容易くないね
でもあなたが思ってるほど難しくもないよ
大丈夫
いつか見えるから


20070506


気が狂うような音の奔流に
飲み込まれないで
ちっぽけな音

届かなくていいよ
届けたいわけじゃない
だけど消えたくもないんだ

遠い遠い遠い土地で
あなたが私でない誰かと並んでる
今はまだ
幸せを願えるほどにはなれないけれど
あなたのために歌うよ

だからどうか
飲み込まれないで


ねこ

20061022


「あんた絶対学生結婚するよね」
 唐突に投げかけられた言葉に、咀嚼していたサンドイッチを飲み下して、少女は答える。
「だとしたら相手は相当の変人ね」
「なんで」
「だって私、砂糖菓子を真綿で包むみたいに愛されるのは嫌」
「つまり?」
「同居してる野良猫、みたいな扱い方してくれる人が良いな」
「…………ほんとに相当の変人じゃなきゃ無理だね」
「でしょう?」
 からからと、少女は笑う。そうして蓋を開けたままのペットボトルに口をつけた。


if you want to know the truth

20060720


さようなら。
さようなら。

死んでしまうならそれも良い。
消えてしまうならそれも良い。
貴方との接点などあってないようなもの。
私が死んでも消えてもきっと貴方はすぐに知ることなどないだろうから。

どうしようもなく女でしかいられない私に、貴方を男として見てしまう私に私は嫌気がさした。
そして何より貴方をめぐって可愛いあの子と対立することがとても嫌だった。

だから貴方に別れを告げよう。
さようなら。
さようなら。

(別れに代えて愛を囁こうか)


あめもよう

20060709


朝起きたら隣に誰もいなくて、向かいの子は昏々と眠ったまま。
まるで最初から誰もいなかったかのような空虚。
床の上の静けさ。
残滓の一欠片すらなく。
あの子はどこに行ったのだろう。

どうしようもない不安。
押し潰されそうな私は君に縋りつく。

ちがうちがう!

何が違うんだ。
君は君でしかないのに、他の誰かと重ねて見ているのは私なのに、君はただ私を受け止めてくれるだけなのに。
なのにその腕から離れようとしているのは、誰?
違っているのは、誰?

認めたくない思いを自覚してしまうのが嫌だからと君を避けてみようか。
そんなこと無理だと知っているよ。
だって私は君に会いたくて仕方がない。
たしかに君の存在に癒され満たされる私がいることを私は知っている。

はやく、あいたい。

嗚呼、言ってしまった。
認めたくない思いを暴かれるから、雨は嫌いだ。
ぐらりと傾いだ私は受け止めてくれる君を知ってしまったがために君に寄り掛かってしまい、嗚呼、だから雨は嫌いなんだ。
認めたくない思いを暴かれるから。
ただでさえ弱い私はいつにも増して脆く壊れやすくなるから。

縋りついて、しまうから。

だから私は眠りに就こう。
そうして明日には君が忘れてしまえればいい。
君が私のことなど歯牙にもかけずにいてくれるなら、寂しくとも悲しくともきっと私はこの思いを殺せるから。


蜉蝣

20060619


捨てられるのはこわくて。
嫌われるのもこわくて。

ここはあたたかくて居心地が良いから、
永遠と錯覚してしまう。

夢ならはやく醒めてください。
そうでないと、
僕は期待してしまうから。

(蜉蝣のように、空に融けてしまえれば良いのに)


20060615


あいしてくれなくていいよ
すてられるのがこわいんだ
だから

あいさないで
すきにならないで
すてるならはじめからかまわないで

(すてられるのがこわくてたまらないんだ)


脆弱

20060615


たぶん殺されたい僕は
眠りを休息を求めていて

嬰児よりも性質の悪い僕は
ただ空気を無駄に消費するばかりで

嗚呼
眠らうか

(それは安らかな)


Candy Lie 2

20060614


あいしてるだなんて嘘はもうつけないし
だって実際そんな風にちゃんと好きなわけじゃないし
なのに僕は何をしているんだろう
これじゃまるで僕は
僕は

(誰か僕の嘘を暴いてよ)


スカラー

20060607


壊したい
愛したい
殺したい

僕は僕の行き場のない想いに押し潰されそうです
だから誰か
僕の想いに行き場を与えてください
そうでないと僕は
僕は

ベクトルになりきれないスカラーを抱えたままそのまま虚ろに蕩けてしまうから

→スカラー:力などの大きさ。ex.)「時速30kmで走った」ときの「時速30km」はスカラー、「時速30kmで南に走った」ときの「時速30km」はベクトル。つまり、速さはスカラー、速度(速さに方向が与えられたもの)はベクトル。なお、スカラーは絶対値で表すため定義域は必ず0以上。ベクトルの定義域は特に条件が与えられていない限り実数全体。




needless

20060607


怖いのです

要らないと言われることが
どうしようもなく
怖いのです

弱さを嘲笑うならそれも良い
けれど「理解」を装った無関心を
今すぐ壊して捨てて消してください

判らないなら判らないと撥ねつけてください
でないと愚かな私は誤解してしまう
助けを求めてしまうから

怖いのです

要らないと言われることは
とても


seduse anyone

20060606


コケティッシュピンクのスカートを
揺らしては歩き
歩いては揺らせば
ほら
ちらりとのぞく脚に目を向ける誰かがいる

莫迦みたいね

ボロボロとも知らず

傷だらけとも知らず
ちらりとのぞいた白さに魅せられるなんて

そうよ中身じゃないもの
彼らが目を向けるのは
挑戦的な肢体だけ
それだけ

→seduse...=...(異性)を誘惑する




Candy Lie

20060605


甘い嘘に優しく包んで
ほんとのキモチは隠し通すの

もしも貴方が気付かないなら
それも良いかしら

なんて
考えてみるけれどそれだけの
一向に進歩のない
私はただ
ここにいる

嘘をついている

甘い言葉で塗り固めて
嘘を


loveless

20060402


すき
だいすき
あいしてる

肥大してくあたしの感情
比例してくあなたの冷静



知ってるよ

あたしの愛が重いこと
あなたの愛が無いこと



知ってるよ

いつかは皆死んでいく
愛があっても死んでしまう
愛が無くても死んでゆける



しってるよ

あいしてる


バレンタインのお返しに私を殺してよ。

20060308


 ころされてもいい。
 いや、寧ろ。



 ころされたい。



 カッターナイフを手に持って怪訝そうにこちらを見やる少年に微笑を送り、そうして。
 そうして、彼女は彼の手をとった。切っ先はこちらを向いている。問題ない。そう、問題ない。
 彼は私を殺し、私は私を殺す。
 近づく切っ先。
 見開かれた彼の瞳。
 止めるものはもう何もない。
 あとはもう、ただ、そこに死が待っている。


愛しき君に。

20060218


「別れよう」
 電話をかけた。
 電話線の向こう側から、「もしもし」が聞こえる前に、私は用件を伝えた。たったひとつの用件を。
「……本気?」
「本気だよ」
 ひそやかに笑ってみせると、深い溜め息が聞こえた。
 ごめんね。
 好きになれると思ったけど、やっぱり無理だった。
 無慈悲な音をたてて途切れた会話の余韻の中で、私はもう一度受話器を持ち上げた。
 別れを告げたこの唇で、私は愛しき君に愛を囁く。


或る冬の小春日和

20060215


届かないよね
届かなくていいけど

好きなのかな
嫌いになりたいけど

遠いのかな
近くにいたいけど



兎角ここは寒い

春は未だ来ない


笑顔に花束を

20060210


別れても、好きじゃなくなれって言われても、他の誰かと付き合ってても。
それでも。

嘲笑ってよ、それでも貴方が好きな僕を。
だけど僕はただ願うよ、貴方の幸せを。


大人にしてよ

20060205


君が僕を犯してくれたら
君も僕も大人になれるというのなら

犯してよ
奥まで君で満たしてよ


fragile

20060204


どこまでも醜い私が紡ぐ言葉は、
壊れそうなくらい脆い、
うつくしい言葉ばかり、

ねぇ、私は、
醜いんだよ、とても。
知ってた?


青天の霹靂

20060202


「女の子は皆、とても幸せそうだね」
 ええそうね、と答えた私は、彼の方を見ることもなく。
 二月の初め、バレンタインまであと2週間ほどあるこの時期、いつでもどこかで駆け引きが行われている。チョコ頂戴。嫌だよ。だとか。
 そんな駆け引きに加わる気など毛頭ない私は、板書をノートに書き写すのに必死だ。
 何せ、テストが近い。近いといってもバレンタイン以後だけれど。
 それにしても、彼がバレンタインのような俗っぽいものに興味を持つとは意外だ。
 そう思いながらも、私は眼鏡を掛けた。前から三番目のこの位置に居ても、黒板が見えないことが間々ある。眼科に行ったら乱視だと言われた。作り直した眼鏡は、まだ馴染まない。
「君はそうでもないみたいだね」
「だって、元はただの命日じゃない」
「まぁ、そうだけど」
 歯切れが悪い。珍しいこともあるものだ。
 私は相変わらず彼を見ることもなく、板書を書き写す。
 酸化・還元なんて、この先どこかで私の役に立つことがあるのだろうか。
 そんな私に、青天の霹靂。
「あの、さ。……僕にチョコ頂戴?」


已に既に、

20060123


私が私であることと私が彼を好きだということとは切り離せなくなっているのかもしれず。
彼から離れた私は水を失い空に溺れる魚なのかもしれず。
不完全であるがゆえに私には私の生の有限を知る術がないのかもしれず。

私は。

嗚呼、私は。
唯の一尾の魚。
水を失い空に溺れる、唯の、魚。


solitude (angela)

20060107 : テスト勉強と称して1番の歌詞を英訳してみました。ところどころ文法間違ってるかも。


Although TV televises the news which happened oversea and is terrible
I'm still in bed and I rub my sleepy eyes
The sky dyed red by the sunset takes step of dusk to this room a little from a chik in the curtains

What can I do? What can I, who is like this, do?
I've been alone for a long time but I'm unaccustomed to loneliness

I gathered only things which are unnecessary
My heart waver in solitude
Can I say that I want love, now?
I'm frightened of being laughed at

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